【1月17日
時事通信社】米国と欧州連合(EU)が対イラン制裁の解除を表明したことで、イスラム教シーア派大国のイランは国際経済に復帰する。このことがスンニ派の
盟主を自任するサウジアラビアなどアラブ諸国の危機感をあおるのは必至で、イランとサウジが深く関与するシリア内戦の終結を主導したいオバマ米政権は、難
しいかじ取りを迫られる。

 米財務省高官によると、欧米の制裁解除によってイランは国外で凍結されていた50億ドル(約5900億円)の資産アクセスできると推定される。
また、米国はイランの核開発に関係した400以上の個人・団体を制裁対象から解除。これによりイラン側と経済取引をした第三国の個人・団体を標的にした2
次制裁が撤廃される。

 オバマ政権が1980年の国交断絶から敵対してきた「テロ支援国」のイランと辛抱強く交渉を続け、核問題の外交解決を選択したのは、混迷する中東
情勢の中で「イランの核保有は最悪の事態となる」(ケリー国務長官)ためだ。欧米側は合意によって、イランが核兵器に必要な兵器級ウランの保有に要する時
間を、当初の2~3カ月から1年間に引き延ばしたと主張している。

 米国とイランの外交チャンネルも「新たな常態」となりつつある。イランは最近、領海内に入った米海軍の哨戒艇2隻を拿捕(だほ)したが、わずか1
日で解放した。ただ、こうした関係の構築は代償を伴っている。イランにウラン濃縮活動の継続を認めたことで、サウジは米国への不信を増大。同盟関係にある
イスラエルとの関係も、これ以上ないほど冷え込んだ。

 オバマ政権は現在、過激派組織「イスラム国」(IS)壊滅戦略の一環として、シリア内戦の終結を最優先課題の一つに位置付けている。アサド政権を
支援するイランと、反体制派を支えるサウジの双方の協力が不可欠で、米国が立ち位置を誤れば対立の激化を招きかねない。(c)時事通信社